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不妊の原因となる「多嚢胞性卵巣症候群」ってどんな病気?

2015/01/21

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不妊の原因となるものは様々ですが、妊娠しにくい症状として「多嚢胞性卵巣症候群」と呼ばれるものがあります。あまり知られていない症状なのですが、実はこれに気が付いていない人もかなり多いんです。

そこで、今回はこの気づきにくい病について考えてみましょう。

多嚢胞性卵巣症候群の基礎

多嚢胞性卵巣症候群とは?

多嚢胞性卵巣症候群はPCOS(polycystic ovarian syndrome)とも呼ばれるもので、卵巣機能に異常をきたすものです。

人の卵巣では卵胞という卵子のもとが成長し、正常であれば成熟した卵胞から卵子が毎月一個ずつ排出されます。これが排卵です。通常卵胞は一つのみが完全に成熟し、それが破裂して、そこから卵細胞(卵子)が飛び出す形で排卵します。

しかし、多嚢胞性卵巣症候群(以降PCOSとする)の場合、卵巣内での卵胞の生育が上手くいかず、排卵がきちんと行われません。PCOSでは多数の卵胞がいっぺんに大きくなり、未成熟のままその成長が止まってしまい、破裂しないために中の卵子が排出されません。

PCOSは超音波で卵巣を見ると、10mm前後の均等な大きさの卵胞が一列に数珠つなぎに見えることが多く、卵胞はこれ以上大きくなりません。そのために「多嚢胞性卵巣」と呼ばれるのです。

この未熟な卵胞はまるでネックレスのように見えるのでこれをネックレスサインと呼び、多嚢胞性卵巣と診断する上では重要な所見となります。

多嚢胞性卵巣症候群になるとどうなる?

PCOSの場合、卵巣自体に痛みを生じたり、不快感があるということはありません。

PCOSの主な自覚症状は

  • 月経周期が長い(おおむね35日以上)
  • 月経不順
  • 月経過多・月経が止まらない
  • にきびが多い
  • 多毛
  • 肥満

などです。

ただ、この症状は別の病でも生じることが多いのが特徴です。生理不順は、PCOSの他に子宮疾患や他の卵巣疾患の可能性もありますし、にきび・多毛・肥満といった症状には個人差があります。

PCOSであっても多毛や肥満等の症状がなく、自覚症状としては月経不順程度しか感じない人もいます。自覚症状だけでは確定できない病ですので、月経不順等がある場合は病院等での検査が必要です。

多嚢胞性卵巣症候群の原因

PCOSの原因は卵巣のホルモンバランスの乱れであると考えられています

排卵を誘発するには、LH(黄体化ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)という二つのホルモンが必要ですが、PCOSの場合は、LHの分泌が増え、FSHの働きが弱くなってしまい、排卵が困難になります。

そして、排卵が起こらないと排卵を促すためにLHの分泌がますます過剰になり、バランスがどんどん崩れてしまいます。

また、インシュリンという血糖値を下げるホルモンの増加もPCOSの発症に関連していると考えられています。

いずれにしてもホルモンバランスが崩れることがPCOSの主な原因なんですね。

肥満の人は要注意

また、PCOSは肥満を起因として発症することがあります。

これは体脂肪に男性ホルモンや女性ホルモンの一つであるエストロゲンがたくさん蓄えられるため。この性ホルモンが視床下部や下垂体などホルモン分泌を司る部位に過剰に働きかけるため、分泌異常が起こると言われています。

さらに、肥満の人は血中のインシュリン濃度が高くなりやすく、インシュリンのバランスも崩れやすいために正常な排卵を阻害する可能性があります。

そのため、過度な肥満はPCOSの引き金となるのです。

多嚢胞性卵巣症候群と妊娠

意外に多い多嚢胞性卵巣症候群

PCOSは排卵障害のため、当然ですが妊娠しにくくなります。子宮内膜症等の子宮疾患は不妊の原因として広く知られるようになってきていますが、PCOSはこれに比べるとまだまだ知られていません。

しかし、実際には生殖可能年齢の女性の6~7%程度がこの症状を示すと言われており、なんと20人に1~2人はPCOSの可能性があるんです。

そのため、PCOSに気が付かずに生活し、自然に妊娠している人もたくさんいます。

自覚症状である肥満やにきび、多毛などは直接排卵障害と結びつけることが難しいので、どうしても気が付きにくいんですね。

妊娠はできるの?

PCOSは排卵障害ですので、この疾患を持つ人はどうしても妊娠はしにくい傾向にあります。ただ、自然妊娠が不可能なわけではありません。

PCOSでも、軽度の場合はきちんと排卵できるケースがあり、どの程度の頻度で排卵できるか、これが自然妊娠をする上で重要になってきますね。

PCOSによってはっきりと不妊の症状を示すのは7 ~8割と言われています。つまり、2~3割の程度人は妊娠はしにくいものの、特に治療をしなくても妊娠が可能なんです。

実際、PCOSとは気が付かずに妊娠している人もかなりの数います。

また、PCOSは加齢とともに症状が重くなることが多く、徐々に正常な排卵がしにくくなると言われています。そのため、同じPCOSの症状を持つ患者でも、30代よりも20代の方が自然妊娠の可能性が高くなります。

PCOSは不妊の原因の一つではありますが、PCOSだから自然妊娠しないというわけではありません。そのため、患者が若い場合や症状が軽度で自然に排卵ができると考えられる場合は自然に妊娠するのを待ち、積極的な不妊治療をしないケースもあります。

多嚢胞性卵巣御症候群の治療

根本的な治療法はない

PCOSは内分泌異常であると考えられていますが、原因やメカニズムは未だ不明なところも多く、根本的な治療法・治療薬はありません。

が、このPCOSは自然治癒の可能性もある極めて不安定な病です。婦人科での治療の他に、漢方などを用いることもありますが、特に治療をせずに自然に治癒してしまう人もいます。

根本的な治療法はないけれど、自然治癒も考えられる、これは厄介ですね。ただ、妊娠を望む場合は自然治癒にかけるのはハイリスクで、症状が悪化する可能性もあるので、積極的に治療した方が安心です。

PCOSの検査

PCOSは、血液中のホルモン検査・ホルモン負荷試験・卵巣の超音波検査によって確定されます。超音波検査で、ネックレスサインが見える場合、ホルモン検査によってLHがFSHより高い場合には、PCOSと診断されます。

ただし、PCOSの血液検査は生理中に行うのが原則です。検査できる時期が限定されているので注意してください。

腹腔鏡手術で卵巣の一部を採取して顕微鏡検査をするケースもありますが、あまり一般的ではありません。

多嚢胞性卵巣症候群だけど妊娠したい!

PCOSと診断された際に重要になるのが妊娠を希望しているのか否かです。

PCOSは卵胞が成熟せず、排卵しにくい状態ですので、妊娠を希望しているのであれば人工的に排卵を促さなければなりません。

妊娠を望む場合には、クロミフェン・クロミッド等の排卵誘発剤で排卵を促します。PCOSの場合は排卵誘発剤の使用により、8割程度の人が排卵をすると言われています。

これで効果がない場合は、排卵をおこすための注射療法や副腎皮質ホルモンを利用したホルモン治療が行われることもあります

多嚢胞性卵巣症候群と手術

PCOSは一般的には投薬や注射などで様子を見ますが、排卵誘発剤や注射をしても排卵が見られない場合は、手術をすることがあります。

この手術は「腹腔鏡下卵巣焼灼術」と呼ばれるもので、腹腔鏡で卵巣に5~10ミリくらいの穴を20ヶ所程度開けるというもの。手術後は約7割の確率で自然排卵が見られるようになり、妊娠の確率はかなり高くなります。

また、腹腔鏡下手術では卵管閉塞等を同時に改善することも可能です。

ただし、手術したからといって100%排卵が起こるわけではなく、失敗して無排卵になった症例もあるので、確実に症状を改善できるとは限りません。

妊娠を希望しない場合は?

妊娠を希望しない場合は、月経・排卵が周期的に起こるように治療を行います。低用量ピルなどを用いたホルモン治療を行うことが多く、生理周期とホルモンバランスを整えていきます。

妊娠希望がない場合は、とりあえず卵巣の排卵機能を正常に戻すための治療を行うのが基本。ただし、医師また個人の状況、年齢、症状の重さによって治療法が異なり、妊娠を希望しない場合であってもクロミッドなどで排卵を促すこともあります。

PCOS治療の上での注意

PCOSの治療で排卵誘発剤を用いる場合、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)に注意しなければなりません。

OHSSとは、卵巣が腫れて腹水がたまるもの。卵巣内で複数の卵胞が成熟した際や排卵直後、妊娠初期などに見られる症状です。軽い卵巣の腫れは気が付かずに過ごしていることが多いのですが、腹水がたまると危険なので注意しておきましょう。

このOHSSは、もともと卵胞が複数同時に生育するPCOSの人は起こりやすいとされている症状で、排卵誘発剤などで卵巣が刺激されるとさらに起きやすくなるので要注意。

若く・痩せている人、また過去にOHSSになった人等もリスクが高いと言われているので気を付けておきましょう。

多嚢胞性卵巣症候群を克服する心得

多嚢胞性卵巣症候群と診断されたら?

PCOSの発症数は20人に1~2人程度とかなり高く、特に不妊を疑って病院を受診した際に発見されることが多くなっています。

聞きなれない病名なので、赤ちゃんができないのではと不安も大きいでしょうが、珍しい病気ではなく、これを克服して赤ちゃんを授かった人はたくさんいますので、不安になる必要はまったくありません。

ただ、PCOSでない人に比べると妊娠しにくい事は確かですし、年を取るほど症状が悪化するので、妊娠を望むのであればできる限り早めに病院を受診し、適切な指導・治療を受けることが重要です

もし月経周期が35日以上と長く、月経周期が不安定な場合はこの症状を疑い、早めに病院で診断を受けた方がいいでしょう。特に赤ちゃんが欲しいのであれば早めに行動することが肝心です。

生理周期が長く、不順な場合や、月経過多、不正出血が見られる場合はPCOSはもちろん、他の子宮・卵巣疾患の可能性もあります。

生活習慣で改善できる可能性あり

PCOSはホルモンの分泌異常が関係しているとされています。人のホルモンの分泌は、ストレスの影響を強く受けますので、不規則な生活を送っている人や、精神的・肉体的ストレスに長時間さらされていると発症・悪化のリスクが高まります

PCOSを防ぎ、またその症状を少しでも改善するためには、日常のストレスを軽減することが大事。

PCOSの場合、仕事を辞めたら治った、引っ越したら治った、あるいは妊娠を諦めた途端に妊娠したといった環境や心境の変化を大きく受ける傾向にあります。不妊だと強く思い込んでしまうと逆に症状を悪化させてしまうことがあるので悩むのは禁物。

また、PCOSは肥満・インシュリンにも関わっていますので、食べ過ぎにも注意が必要です。インシュリンが過剰に分泌されたり、肥満によってインシュリンの作用が妨げられるような生活を避けることもPCOSの予防や改善につながります。

根本的な治療法は確立されていないPCOSですが、妊娠が絶望的な病気ではありませんし、自然治癒も十分にあり得ます。気を落とさずに症状と向かい合うのがPCOSを克服するために一番必要なことです。

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